足利義政らが収集した書画、工芸品、いわゆる東山御物を大名物(おおめいぶつ)と称するのをはじめ、茶道の世界では価値の高い茶道具を名物といって珍重する。茶道の発展に伴い、名物茶器とともに大茶人ゆかりの裂類についても名物の資格が与えられるに至った。これを名物裂と称して日本各地の茶人によって収集され今日まで保存されて、当時の織物を知るうえで今や世界的に貴重なコレクションとなっている。名物裂は緞子(どんす)をはじめ金襴(きんらん)、銀襴、間道(かんとう)、更紗(さらさ)、金紗(きんしゃ)など十数品種、三百数十種が数えられているが、厳密に定まったものではない。ほとんどすべてが舶載品であるが、製織地は中国、中央アジア、西アジア、南アジアと多岐にわたっている。
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