吉祥文(きっしょうもん)

めでたい慶賀の意味をもつ文様。中国では馬王堆(まおうたい)漢墓出土の染織品に長寿繍(ちょうじゅしゅう)がみられ、同墓棺(ばかん)の表面に竜、虎、朱雀(しゅじゃく)、鹿、仙人など祥瑞(しょうずい)の文様があらわされた。わが国でも中国にならって正倉院宝物には鳳凰(ほうおう)などのほかに、さらに西域の吉祥文である葡萄(ぶどう)唐草文が併用されているのをみる。平安時代に年中行事が定まるに伴って和様の吉祥文が新たに完成する。松、鶴、菊花などが代表的なもの。その後もその伝統によりながら各時代の様相を示すが、江戸時代には最も多様をきわめ、小袖模様はほとんどなんらかの意味で吉祥の気分を秘めている。とくに几帳や御所車、檜扇(ひおうぎ)など、平安朝を意味する対象が吉祥文として多くとり上がられているのに注目される。

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