立涌文(たてわくもん)

二本の曲線を相対的にふくらませたり、せばめたりして連続させる割付文様。枠形の立つ文様とも雲気などの涌き立ちのぼる形象ともいう。ふくらんだ空間に雲、波、藤、菊、松などさまざまのものをおさめて、雲立涌、波立涌、藤立涌、菊立涌、松立涌などとする。また、雲、波その他のものを立涌形にまとめた場合も同様によぶ。有職(ゆうそく)文様としても顕著で、雲立涌、藤立涌、菊唐草立涌などがある。「源氏物語絵巻」(徳川・五島本)に女性の表着、屏風裏貼(びょうぶうらばり)などとしばしばみられる。その源流は正倉院宝物の染織文様(花立涌文風通、縹〈はなだ〉地唐草花鳥文夾纈絁<きょうけちあしぎぬ>)などにあると考えられる。

■関連項目